2012年9月24日月曜日

新しい出生前診断について


















新型出生前診断

米国の検査会社が開発し、米国で昨年10月から始まった。仕組みは左記のように妊娠10週前後の妊婦の血漿から成分には、わずかに胎児のDNAが漂っている。妊婦の血漿からDNAを取り出し、23対ある染色体のどれに由来するか分類する。たとえばダウン症の場合は21番染色体に由来するDNAの割合が、通常よりわずかに多ければ「陽性」と判定される。(毎日新聞、9月1日版)

 8月・9月のニュースや新聞等で「新しい出生前の診断」についてお知りになっていると思います。私もこのニュースを知り「これは人々にとってセンセーショナルなニュースになる」と気になったため、新聞各紙の論調や意見を検索してみました。それぞれの新聞で特色のある見出しで書かれていました。以下はその抜粋です。

 朝日新聞:新型の出生前診断「安易な実施は謹んで」学会が声明(2012・9/2)
 産経新聞:妊婦の血液でダウン症診断、5施設で9月以降導入、中絶大幅増の懸念も(2012・8/29)
 日本経済新聞:胎児の健康な状態を調べる「出生前診断」新手法始まる、十分なカウンセリングや説明が不可欠(2012・9/7)
 毎日新聞:新型出生前診断、今月にも開始、高い精度、心のケアに遅れ(2012・9/1)
 読売新聞:出生前診断「命の選別」助長せぬルールを(2012・9/9)

 これらの記事を読みながら、この生殖医療の進歩がもたらした波紋の大きさ、重さを痛感しました。特に今回の検査は上記の米国の検査の説明にも書かれていますように、ダウン症の診断が主です(他の13番、18番染色体も判定化のであるとも述べられていました)。ダウン症の子どもたちは現在多くの人の支援を受けながらそれぞれの人生を送られています。私も臨床の場面でダウン症の子どもたちと多くの時間を過ごし、子どもたちや家族から学ばせていただきました。それらの子どもたちの権利や家族の思いを考えると、この出生前診断を手放しで受け入れられない感があります。医療の進歩は素晴らしことです。しかしそれを使う私たち医療者はその使い方を誤ってはいないのだろうか、われわれが創りだしたものを前に、今一度立ち止り、考えていかねばならないと思いました。