2013年、新しい年を迎えました。新年の必需品といえばカレンダーですね。一年間毎日見て過ごすのだからお気に入りを見つけようと、毎年年末になると書店や文具店を探し歩きます。研究室の今年のカレンダーは魚の透明標本カレンダー、アジやカワハギの骨格や皮が赤や青に染まって不思議な美しさです。最後のページにニワトリの透明標本があって、以前(といってもずいぶん昔のこと)していた実験のことを思い出しました。
それはニワトリの受精卵から中身を取り出して育てるというものでした。取り出した卵をインキュベーターで温めながら毎日観察していくと、黄身の上のうっすらと白い胚に赤い点が多数現れ、やがてその点がつながって血管で出来た網目を作ります。丸い血管網の中心の小さな胚にもっと小さな赤い粒ができてやがて拍動が始まります。胚は少しずつ育って雛の形に近づいていきます。残念ながらその頃は羽化させることはできませんでしたが。
話が逸れましたが、カレンダーを見ていてこの胚の骨の発育を確認するために、先輩が骨格標本を作っていたのを思い出したのです。私は染色をしたことがなかったので、少し調べてみました。骨格の染色では、硬骨にアリザリンレッドSという色素、軟骨にはアルシアンブルーという色素を使うそうです。アリザリンレッドSは金属イオンと結合して赤く発色する色素で、硬骨に含まれる金属のカルシウムを染色し、アルシアンブルーは軟骨に豊富な酸性ムコ多糖(サプリメントとしてよく耳にするコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸など、糖質の一種)の硫酸基やカルボキシル基と結合する青い色素です。アルシアンブルーは病理検査にも使われる試薬です。標本を透明にするためには、筋肉などのタンパク質を分解するのだそうで、タンパク質のペプチド結合を加水分解するために水酸化ナトリウム水溶液など強アルカリで処理するか、トリプシンというタンパク分解酵素を使います。こうして見ると生化学でも出てくる化学の用語がいっぱい。生物の体を化学の目で見ると組織・器官ごとに特徴のあるいろいろな成分で成り立っていることが、またそれらを見つけるために様々な化学的な手法が用いられていることが分かります。