2010年9月6日月曜日

東尋坊の夕日に思うこと

 8月27日に福井大学医学部の附属病院で開かれた放射線被爆医療のプログラムに参加しました。これは、日本災害看護学会のプレ企画による講演と演習で、日頃、イメージしにくい放射線被爆医療の現場に触れました。養生訓練と呼ばれた演習では、まず被爆者を運び込む部屋が汚染されないようにシートを床に敷き詰め、壁にも貼っていくところを見学しました。養生シートは意外と薄くて、こんなに薄くても効果があるということを知りました。


 次に、参加者の中から、看護師役が選ばれ、放射線の影響を受けないような服装を整えて行きました。オペ着の裾や袖口等を養生テープでぐるぐる巻きにして、放射線が全く入り込む余地が無いようにしていきます。もちろん、空いている背中も隙間が無いように養生テープが貼られていきます。顔にはゴーグルとマスク、頭には帽子を被ります。この時点で、もはや誰が誰だか分からなくなってしまいました。そのため、体の前後に名前を大きくマジックで書き、個人が識別できるようにしました。見るからに暑そうです。実際に看護師役になった人に話を聞くと、実はこの部屋、震える程にクーラーが効いていたのですが、完全なサウナ状態だったと言います。


 準備ができると「被爆した可能性のある患者」という設定の模擬患者さんが運び込まれて来ました。運び込まれる患者も養生シートで覆われていました。そこで、サーベイメーターという放射線の測定器具を用いて、放射線の測定を行うのです。もちろん、模擬患者さんですから、放射線に被爆してはいません。その代わりに、自然界にあり人体に影響がない程度の放射線を出している岩石を使って、サーベイメーターの変化を実地に体験しました。そして、汚染している部位が分かれば、その部位を洗い、改めてサーベイメーターで放射線を測定します。この過程を「除染(じょせん)」と呼び、これが済んで初めて一般の救急室へ搬送されます。


 座学で基礎的な知識を学んだ後の1時間半程度の演習でしたが、放射線が目に見えないものだけに念には念を入れて養生し、除染するたいへんさに圧倒されました。除染が済んでも、看護師役が着ていたオペ着なども放射性廃棄物として扱われます。安全を守るということが如何に多くの手順を踏みながら行われるかということを知りました。


 プレ企画に参加した帰りに、学会の事務局のみなさんのご配慮で、東尋坊に立ち寄りました。グッドタイミングで東尋坊から夕日をみることができました。その美しさにこころが洗われる思いがしました。海から吹き上げてくる風の心地よさを感じながら、安全を守ることの難しさと重要性を再認識したひとときでした。