2012年5月28日月曜日

大学ってなんなんだ?

今日は入学式だ。大学生として、人生の新たなステップへと踏み出す晴れがましい日であり、希望に満ちている、はずなのだが、なんなのだろう、なんだかモヤモヤする…。

 嬉しくないわけではない。こうやって買ったばかり(ほんとは「買ってもらったばかり」)のスーツを身にまとい、フレッシュな気分ではある。合格が決まったあの日、確かにぼくは喜んだ。オフクロもオヤジも喜んでいた。その晩はご馳走だった。

 でもこの大学を選んだ理由って、なんだったっけ。自分はなんとなく理系だったけど、それは日本史とか世界史とかをやりたくなかったから。暗記モノは嫌いなのである。そして化学は嫌いではない。

 進路を決めなくてはいけなくなったときに、とりあえずは大学には行こうか、と。なぜなら、まだ働きたくはないから。ではどの学部にするか。工学部に行ってエンジニア?ピンとこない。農学部?食糧問題は深刻なのだろうけど、自分が農業をするイメージがわかない。理学部に行ったら、なにを勉強するのだろう?医学部?入れるわけがない。

 そんなときオフクロが、とりあえず資格がとれるところに行っておいたら、と言った。まだまだ不景気だし(て言うかほんとに「不景気」なの?)、普通の大学へ行ったら就活大変なんじゃない?医療系の資格とっといたら食いっぱぐれないだろうし、って。高校の担任もほとんど同じことを言った。まあ、それもワルくないかな、って思い、受けてみたらなんだか受かってしまったのです。

 こんな不真面目なぼくが、この大学に来ていいのか。ここは医療従事者とか、学校の先生とか、そういった専門家になりたい人たちが集うところでしょ。きっとみんな、やる気満々なのだろう。自分たちが目指す専門職について、熱く語り合う人々に違いない。そして、みんな勉強にはほんとに真面目にとり組む…。ああ、ぼくは絶対に浮いてしまう、なんでこんなやる気のない奴がこの大学に来たの?と思われ、軽蔑されるんじゃないだろうか。

 大学に着いた。女子ばっかりじゃないか。話には聞いていたけど、ここまでとは。工学部に行った友達は、

「オレのところは男ばっかりや。オマエのとこは女の子が大半らしいな。羨ましい。」

って言ってたけど、冗談じゃない。ぼくは女子と話すのが苦手なのです。18才にして。高校の時だってそうだった。女子となにを話していいのかわからない。そんな自分が恥ずかしかったけど、それをさとられるのも嫌だった。で、自分は硬派でありハードボイルドなのだ、映画も小説も全部そっち系、ちゃらい男は男じゃない、で、女なんて…、ってことにしてシブい自分をきどっていた。でもほんとは女子とどう接していいかわからなかっただけなのである。ぼくはこんな情けない自分に気づいている。気づいているからこそ、よけいみじめである。でもこんな自分をさとられるわけにはいかない。

 ぼくは4年間、こんな調子でみじめに過ごすのだろうか。4年間、と考えている時点で、なにさまなの?とも思う。なぜなら4年間で済む、という保証はないのだから。あー、なにをグダグダと考えているんだ、天気もいいのに、と思っているとき、となりの奴が今にもぼくに話しかけようとしていることがわかった。根拠はないけど、絶対そうだ。自分には決してできない髪型をしたちゃらい男が、でもちゃらく見えて、実はきっと資格獲得に熱い思いを抱いているであろう男が、ああ、切り出してきた…。

「なあ、首の後ろ。ほら、襟からネクタイはみ出てんで。それ、わざと?」

つづく…