2010年7月12日月曜日

神戸と六甲の山々~ハイキング・登山の勧め~

神戸は今年、阪神淡路大震災15周年を迎えました。
大きく様変わりした街もあれば、昔ながらの住宅が軒を並べる地域もあります。
明治維新以来、日本を代表する国際港湾都市として発展してきた神戸ですが、
今年の大河ドラマの主役・坂本龍馬とも所縁が深く、
現在の阪神高速京橋インター近くには海軍操練所がありました。
市街からはすぐ後ろの六甲山地を眺めることができます。
昔から「山が見えたら北、海が見えたら南」と教えられてきましたが、
今でも元町のデパートの掲示にその名残がうかがえます。
神戸のように、街からすぐに山に入れる都会は世界的にも珍しく、
その山上には道路も通じており、他の地域から来たハイカーは驚かれます。
明治7年(1874年)に3人の外国人が六甲山地を登ったのが近代登山の発祥とされるほど、
神戸と登山は縁が深いと言えます。


ご存じの方が多いかと思いますが、
本学の広場からも六甲山地の一角を占める、高取山を眺めることができます。
毎日、学生さんを汗いっぱいにする「常盤坂」も、
実は高取山頂にある高取神社への参道であると同時に、主要な登山道でもあります。
高取神社は高取山一帯を神域とし、
神功皇后が武甕槌尊(たけみかづちのみこと)をお祀りしたのが始まりだと言われています。
地元では「たかとりさん」と呼ばれ、毎日登山の人々を多くみかけますが、
その名前の由来が興味深いです。
なんでも昔、この辺りを襲った大洪水で山が水没した際、
山上の松に絡んだ蛸を捕獲したことから「蛸取り山」と呼ばれたという話や、
江戸時代までは「神撫山」と言われていた話があります。
神功皇后が休憩した時に石を撫でたところ、急に大岩になり、
ついには山になったことから「神撫山」と名付けられたといいます。
鷹の巣が多く、鷹狩りもされていたが、
麓住民への年貢の厳しさから「鷹」を「高」に変えたという話も残っているようです。
高取山は、“単独行”で有名な登山家、加藤文太郎が愛した山でもあります。
新田次郎の小説『孤高の人』(新潮文庫)のモデルでもあり、
最近では原作をもとに漫画化され、40万部の大ヒットだそうです。
実は、その加藤の下宿が今の常盤女子高近くの「池田上町」、
結婚後の新居が長田神社に近い「池田広町」にあったといいますから、
とても親近感がわきます。その加藤が『孤高の人』の中で、山に登る理由を語る場面があります。
「なぜ山に登るのか」という問いに対して、
登山家ジョージ・マロリーの「そこに山があるから」という返答は有名です。
これは『孤高の人』のテーマでもあるのですが、
加藤はただ「汗をかくために登る」と答えています。
この加藤の単純明快な回答をどのように感じますか?


今、世間ではアウトドアブーム、登山ブームと呼ばれ、
多くの若者が富士山や屋久島に向かいます。
六甲の山々でも中高年の方々に混じり、多くの若い「女子」の姿が見られます。
いわゆる「山ガール」と呼ばれる方々で、
女性雑誌でも特集が組まれるほどです。
ダイエット目的の人もいるかもしれませんが、
多くの方々はただ単純に山に登ることで普段の生活では味わえない何かを感じているのではないでしょうか。山の空気に触れ、花や鳥などの自然の姿を都会のすぐ後ろで味わえるのは大きな喜びです。
また、山では見知らぬ人同士が自然に
「こんにちは!」「おはようございます」
と挨拶を交わす姿が見られます。
車からゴミを投げ捨てたりする人もいる中、
多くのハイカーは自分のゴミはきちんと持ち帰っています。
そんな当たり前ですが、マナーある“普通の”人間としての姿を見ることもできます。
いろいろと楽しいことが多い世の中ですが、
せっかく神戸で生活しているので街のすぐ後ろに山があるメリットを活用してみたいと思います。
本学の「女子」にも是非とも六甲の山々に触れて欲しいと思います。
まずは、本学のお膝元、高取山からチャレンジしてみるのもいいでしょう。
心地よい疲れを感じると同時に、爽やかで新鮮なものを感じることができることと思います。
加藤文太郎のように、難しいことは考えず、
ただただ純粋に汗を流し、山歩きを楽しんでみたいと思っています。

看護学科
福田和明