2012年3月19日月曜日

東日本大震災1回忌におもうこと

世界(岩波書店)4月号に岡田知弘氏の論文がある。

この『惨事便乗型の復興から「人間の復興へ」』と題した寄稿に、

関東大震災後の後藤新平による帝都復興構想に対する

経済学者・福田徳三の痛烈な批判の言葉が引用されている。




「私は復興事業の第一は、人間の復興でなければならぬと主張する。

人間の復興とは、大災によって破壊せられた生存の機会の復興を意味する。

今日の人間は、生存する為に、生活し、営業し労働しなければならぬ。

即ち生存機会の復興は、生活、営業および労働機会の復興を意味する。

道路や建物は、この営生の機会を維持し擁護する道具立てに過ぎない。

それらを復興しても、本体たり実質たる営生の機会が復興せられなければ

何にもならないのである」





 東日本大震災から1年がたった。復興は遅々として進まない。

福田徳三のいう「人間の復興」か、政府や宮城県知事が強く推し進める「創造的復興」か。


 この1年、メディアにはTPPや規制緩和の文字が躍った。

一方で、1400人を超える震災関連死の認定が報道されている。

地震や津波を避けることはできないが、その後に起こる被災者の

生存を脅かす要因を取り除くことは可能である。

阪神・淡路大震災では、千載一遇のチャンスとばかりに便乗型復興に

よってコミュニティが分断され多くの孤独死を招いた。

道は広がり、公園ができ、町はきれいになったのに人間も、

活気も戻らない寒々とした街がある。

いま、東北は同じ運命にある。医療は「生きる力を与える知識と技術」であり

「死を防ぐ知識と技術」であると定義できるだろう。

その職業に関わるわれわれは、今回も同じ轍を踏むわけにはいかない。


 3月11日、今日は東北とともに悲しもう。

そして「人間」の復興支援を永くながく続けていくことを誓うことにしよう。