2012年3月12日月曜日

細胞は眠っています

私たちヒトの体は約60兆個の細胞で成り立っています。

ヒトから取り出した細胞をディッシュ(プラスチックのお皿)の中で生き続けられるようにしたものを細胞株と呼び、たくさんの種類の細胞株が世界中の研究室で培養され、いのちを救うための研究が行われています。



さて、私のゼミの卒業研究ではHL60とK 562という名前の白血病の細胞株を使っていて、普段はマイナス80℃の冷凍庫の中で眠って(保存して)います。
ゼミの学生達が実験を始めるときには、この細胞を起こして(解凍して)培養液の中で殖やしてから使います。
でも、これがちょっと手間のかかる仕事で、週に2回ほど、無菌操作で雑菌やカビのコンタミ(汚染)を防ぎつつ、分裂して密度の高くなった細胞を新しいディッシュに分けて培養液を継ぎ足し、「細胞さま」が元気に殖えるように面倒を見続ける必要があります。(これを「継代」といいます。)













「先生、なかなか殖えません… (-.-)」
「アーッ! カビのコンタミが… (>_<)」
という試練を越えつつ細胞さまの継代を繰り返し、
何とか卒業研究の実験を終え、
さあ後はプレゼンの準備だけという段階になったとき…

学生達の 「先生、細胞どうしたらいいですか?」 という問いに
「処分!」 と即座に答えたら…

「え~っ!」
「ウソッ!」
こんなに苦労して継代してきた細胞さまなのに、
そんな簡単に処分しちゃうの~? という学生達の非難の声

大丈夫。
冷凍庫にはまだ仲間の細胞が眠っています。
そして春になれば、後輩たちがまた細胞を起こして、
皆さんの研究を「継代」してくれますよ。