2009年11月17日火曜日

自然との出会いのときー日本の「秋」によせて

日本の幼稚園や保育所では、秋は、運動会や遠足や造形展など多彩な
行事が行われ、子ども達の園生活は活気あふれる季節を迎えます。

4月に新しく出会った友達とも、秋になると、互いの関係がとれるようになり、
共通の目標に向かって、いろいろな活動に、意欲的に取り組むことが、
無理なくできるようになるからです。こうした、子どもの心の育ちとともに、
この時期の活動が充実するもうひとつの大きな理由として、日本の「秋」が、
豊かな自然との出会いの季節であることがあげられます。

高く澄みわたる秋晴れの空の下、稲穂が実り、味覚の秋を迎えます。
自然界が色づく美しい様子は、野山が染まる・黄金に色づく・秋の夕日に
照る山紅葉…と形容されます。

実にさまざまに表現される「秋」は、好奇心いっぱいの子どもにとっても、
身近な自然との楽しい出会いのときなのです。散歩や園庭で見つけた
落ち葉やドングリ、畑の土の中から掘り出したサツマイモ・触れた土の
感触・昆虫や幼虫・飛び交うトンボたち…と、自然は、子どもへの
一番大切な贈り物を、 そこここに、そっと用意しておいてくれます。
このようにして、子どもは、 季節の変化を感じ、秋の自然と十分かかわって
遊び、幼児期の大切な経験を重ねていきます。

子どもは、身近な自然との偶然の出会いに、「あれー」「へー」と敏感に
反応し、触ったり臭いをかいだりと、五感を使って熱心に確かめようとします。
自然の不思議さに「なぜかな」と疑問を持ち、「こうしたらどうなる」
「こうかもしれない」と想像力を広げます。
自分のイメージに近づけようとしていろいろと試してみて、
その結果に納得したり満足したり、また疑問への答えを見つけだし、
新たな発見に眼を輝かせるのです。

自然とのふれあいの中でみられる、こうした子どもの心の一連の動きは、
将来の知的学びを支える、ひたむきな心・やる気・意志などの源泉であり、
幼児期にこそ育てたい、素直に感じる力そのものであります。
子どもは、自然との出会いを、遊びとして楽しみながら、
遊びの中での学びと科学する心につながる活動を行っていきます。

子どもに本来備わっている、美しいもの、未知なるもの、
神秘的なものに目を見張る感性「センス・オブ・ワンダー」を育むために、
子どもとともに、自然を探検し、発見の喜びに胸をときめかせましょう。※

※レイチェル・カーソン 『センス・オブ・ワンダー』 (新潮社)
                神戸常盤大学短期大学部幼児教育学科教授