2010年3月22日月曜日

スケッチブック

小児看護学実習中に密かに楽しみにしていることがあります。
それはスケッチブックを開くこと。
スケッチブックには「こどもたちと学生の時間」が見える様に思うのです。


これは何歳のお子さんの絵でしょう?



入院しているこどもは非常に緊張が強く医師や看護師には勿論私たち実習生に対しても恐怖心があり「こんにちは」とあいさつに行くだけで泣き出したりお母さんの後ろに隠れてしまったりこちらを見ようともしてくれない事が殆どです。また病状や治療による苦痛が大きく、泣いたり暴れたりしている姿もよく見られます。

実習では乳幼児期のお子様を受け持たせて頂くことが多いので、実習を経験した学生さんなら「そうやった、そうやった!」と思い出すでしょう。これは発達途上にあるこどもだからこその反応であり、こどもが病気になるということ、入院するということ、治療を受けるということの影響がよくわかります。私たち小児看護従事者にはこどもの本来の姿を取り戻し発達を促す看護が求められています。

こどもの緊張や苦痛を緩和し主体性を取り戻す為に、実習中は遊びをきっかけに関わることが多くなります。お歌、絵本、折り紙、絵の具、粘土、トランプ、工作などなど。
なかでも大きなスケッチブックと色とりどりのクレヨンを使ったお絵かきは、安静が必要なこどもや点滴が身体についているこどもでも取りかかりやすく、実習1日目から2日目には学生とこどもが黙々と絵を描いている姿をよく見かけます。とても微笑ましいです。初めは両者とも緊張しているのだけれど、学生はこどもが描いたものを見て「これはなあに?」「上手に書けるね」と話し始めるきっかけを得、こどもは新しいものに興味を持ち自分で色を選び自由にできる喜びを感じながら学生の様子を窺っています。

そうやってこどもと学生は少しずつ近づき、学生はこどもの思いを知ろうとし看護を考え始めます。こどもは徐々に緊張が解け本来の姿を取り戻し持っている力を発揮し困難なことにも立ち向かい始めます。怖がっていた聴診器での診察を受けられた、嫌がっていた吸入を最後までお口を開けて自分でできた、苦いお薬を頑張って飲めた・・・小さな体で全力で取り組むその姿は何度見ても感動します。同時に、こどもたちの力を引き出そうと努力する学生達の姿にも心打たれます。
そんな場面を見てきたからそのきっかけとなった絵を見ることも好きになりました。描いたものにどんな思いが込められているのか、これを描いた時どんな気持ちだったのか、学生もきっと緊張しながら一緒に描いたのだろうなあ、ふたりだけで交わした言葉があるのだろう、ふたりだけに分かる時間があるんだなあ…と思うと胸がきゅーっとなるのです。

こどもと学生の合作

そんな私も10年前看護学生でした。
その時に出会ったお子さんに頂いた絵です。

私です→               

このお子さんとお母さんとの出会いがあり、
尊敬する看護師と実習指導者との出会いがあったから
私は小児看護の道を選び進んできました。
看護学生にとっての実習はその後の看護師人生に
大きく影響すると私は思っています。
どうか学生達が実習で充実した時間を得られるように、
また良き出会いがあるようにと願いつつこれからも
こどもと学生を見守り共に成長していきたいと思います。

看護学科 石井麻紀