2010年6月22日火曜日

臨床検査技師の世界(その2)

 血液型の検査はおもしろく夢がありました。特殊な遺伝形式を示すAB型(シスAB型:AB型とO型の親子関係が成立する血液型)の人は、なぜか徳島県の出身者であることが多いという地域集積性を持つのです。また、ABO血液型についてはすべて分かっていると思っていたのに未だ不明な点があり、明らかに親子で間違いないと思われる親子が、従来のABO血液型の遺伝学説では説明できないのです。極めて少数例ですが謎で、まだ解決できないでいます。スウェーデンに多いp(スモール・ピー)型という血液型が何故か、瀬戸内海のある島の出身者の方に多く見つかるのです。これなどは遠い昔の十字軍の東征、チンギス・ハーンのヨーロッパ遠征、シルク-ロードによる東西の交流などなど、遙か古の人の交流を想像させ、私たちに大きな夢とロマンを与えてくれます。

 自然界には分かっているようで分からないことが、まだまだたくさんあります。そして「新しい発見はそれまでの常識の中にはない」という当たり前のことを仕事の中で学びました。私は幸運にも「世界第1例」の事例をいくつか経験する機会に恵まれました。後から考えて、その時にそれまでの常識の中で処理をして終わっていたら「世界第1例」を経験する事はなかったと思います。頭で考える前に身体を動かし、事実を確認することを行ったからこそ、新しい発見に遭遇し、心を揺さぶられる喜びを経験できたと思っています。また、自身の行った仕事の1つに「サイトメガロウイルス陰性者の確保と登録制度の導入」という日本で最初の仕事があります。多くの仕事仲間の助けでなし得た仕事ですが、骨髄移植の成功率の向上とその後の脳死患者をドナー(臓器提供者:心臓)とする心臓移植に多いに貢献できました。我が国の再開第1例から10数例まで、脳死ドナーによる心臓移植手術時に必要なサイトメガロウイルス陰性血液の確保で関与できた事は、望外の喜びでした。生涯で1人の人の命を救える事に関係できることがあれば、素晴らしい人生だと考えていた私にとって臨床検査技師という職種を選んだことで、幾人もの人の命を救うことに間接的にでも関与できたことはこの上ない喜びでした。本当に臨床検査技師の仕事を生涯の仕事として選んでよかったとつくづく思っています。今までに幾度か「早く朝になってくれないかな~。早く職場に出て思いついたアイデアを確認してみたい」と思ったことがありました。そのときは充実感、生き甲斐、やりがいを全身で感じていました。限りある人生に意味を持たせて生きてみませんか!辛いこともありますが楽しいですよ。是非、臨床検査技師の世界へ飛び込んで来てください。世界を相手に仕事ができますし、大いに夢が見れて、やりがいがありますよ。


医療検査学科  永尾暢夫